III International Symposium on
the Ancient Maya in Japan:
Recent Interdisciplinary Research in
Maya Archaeology
第3回
国際マヤシンポジウム
異分野融合で見える最先端のマヤ考古学
宇宙線による
マヤの神殿ピラミッドの非破壊イメージング
-ホンジュラスのコパン遺跡を対象とした調査研究-
森島邦博
(名古屋大学)
中村誠一(金沢大学)
市川彰(名古屋大学)
北川暢子(名古屋大学)
久野光慧(名古屋大学)
眞部祐太(名古屋大学)
干潟紘太朗(名古屋大学)
榊原亜美(名古屋大学)
西尾晃(名古屋大学)
遺跡などの文化財内部を非破壊で可視化する革新的な技術「宇宙線イメージング」の開発を進めている。宇宙線とは、宇宙の天体現像などを起源とした高エネルギー放射線である。その宇宙線中に含まれる素粒子「ミューオン」は非常に高い物質透過力(高いエネルギーの粒子は1㎞の岩盤さえも貫通する)を持ち、上空のあらゆる方向から絶えず地表に降り注いでいる。観測対象となる物体を通過する宇宙線を特殊な写真フィルム(原子核乾板)により記録・分析する事でX線レントゲン撮影のように非破壊で観測対象の内部イメージ(積算密度の分布)が得られる。我々は、この技術をエジプトのクフ王のピラミッドに適用する事で、2017年にはピラミッド内部に未知の巨大空間を発見した(K. Morishima et. al., Nature 552, 386 (2017))。
この宇宙線イメージング技術をマヤの神殿ピラミッド内部の未発見の石室王墓等の探索に用いる研究を2018年よりホンジュラスのコパン遺跡を対象に実施している。宇宙線を検出するフィルムを神殿ピラミッドの内部に張り巡らされたトンネルに設置する事で、その上部方向のイメージを取得した。本発表では、宇宙線イメージングの原理とホンジュラスのコパン遺跡の調査における観測データについて報告する。
登壇者(森島邦博)略歴
現在、名古屋大学大学院理学研究科特任助教(兼務として名古屋大学高等研究院、名古屋大学未来材料・システム研究所、JSTさきがけ研究者)。名古屋大学大学院理学研究科博士課程では、未だ謎が多い素粒子の一種「ニュートリノ」の研究のための素粒子計測技術の開発を行い、博士号(理学)を取得した。その後、名古屋大学理学研究科研究員等を経て、現職。専門は素粒子宇宙物理学であるが、素粒子計測技術を用いた異分野融合研究なども積極的に進めており、特に、宇宙線を使った巨大物体内部の可視化技術である宇宙線イメージングの研究開発を推進している。主な業績として、K. Morishima et. al., “Discovery of a big void in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons”, Nature 552, 386 (2017)などがある。受賞歴として、平成26年度放射線奨励賞、平成27年度日本写真学会進歩賞、平成29年度市村学術賞貢献賞、平成31年度文部科学大臣表彰若手科学者賞。