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マヤ考古学史:

200年にわたる研究の歴史

トマス・バリエントス

(デルバジェ大学、グアテマラ)

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マヤ考古学の歴史は欧米諸国に異文化への探究心が芽生えた啓蒙思想の時代へ遡る。中央アメリカを巡った探検隊たちのスリリングな体験が旅行記となり、新聞記事、小説となって瞬く間に浸透し、それ以来、古代マヤ文明は2世紀以上にわたって多くの人々を魅了し続けている。失われた都市を求めてジャングルに入る冒険者=考古学者というイメージもこのころに流布した冒険譚によるところが大きい。しかし、現代のマヤ考古学はもちろん冒険の考古学ではない。米国で近代的な人類学、考古学が生まれると、マヤ考古学にも客観性を追求する社会科学としての基礎が確立され、その後、機能主義や進化主義などさまざまな理論の影響を受けて、マヤ考古学は社会の複雑化と発展を科学的に議論する最先端の議場の一つとなる。20世紀後半に進んだマヤ文字の解読もマヤ考古学に革新的な進歩を生んだ。最近では研究の多様化、学際化が進み、自然科学分野での分析方法も次々と適用され、多くの優れた成果が挙がっている。本講演ではマヤ考古学の200年にわたる研究史を紐解くとともに、文化資源学的な側面から持続可能な観光開発を目指す試みや、古代マヤの末裔の人々による自発的な遺跡の保存を促すための教育改革など、未来へ向けたマヤ考古学にも一定の指標を示すものである。

​講演者略歴​

グアテマラ、デルバジェ大学卒業後、米国ヴァンダービルド大学で博士号を取得、グアテマラ全土で25年間に及ぶ考古学研究の経験を持つ。現在グアテマラ、デルバジェ大学大学社会学部考古学学科学科長、および同学考古学人類学研究センター長。グアテマラにおけるパブリック考古学の先駆けとも言えるカンクエン考古学プロジェクトに従事した後、直近12年間は共同調査団長としてグアテマラ、ペテン地方北西部のラ・コロナ広域考古学プロジェクト(PRALC)を主宰。専門は建造物による空間構成の分析と古代における地政学理論、マヤ考古学全般。下部領域としての研究テーマは文化遺産学、パブリック考古学、アイデンティティの研究、先スペイン期のマヤ食文化、持続可能な文化的観光事業の創出など多岐に渡る。

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