III International Symposium on
the Ancient Maya in Japan:
Recent Interdisciplinary Research in
Maya Archaeology
第3回
国際マヤシンポジウム
異分野融合で見える最先端のマヤ考古学
メソアメリカにおける同位体、居住の歴史と移民の研究
キャロライン・フレイワルド
(ミシシッピ大学、米国)(初来日)
ダグラス・プライス
(ウィスコンシン大学、米国)
ストロンチウム安定同位体を用いた移民の研究は、昨今の考古学においてはもはやそう珍しいものではない。各地で古代の人々の広範な移民流動が次々と明らかになっており、移民の原因やその波及効果に関する議論にも拍車がかかってきている。安定同位体分析を通し、考古学者が古代の移民に関するより深い論理を構築することが可能になってきているのである。しかし、人間集団における同位体比率の多様性という研究の根本的な部分ではいまだに答えの出されていない問題もいくつか存在する。輸入された食品を古代人が食べていた場合にはどうなるのか?、地質学的な多様性が人体に与える影響はどうなのか?、また分析資料の大きさはどの程度であるべきなのか?、そして、実際どのように在地民を移民と区別するのか?。これらの問題に対しては明確なコンセンサスはいまだに取れていない。本発表ではメソアメリカ中から集められた広範な試料を用い、動物骨から採取された生物学的指標が同位体による移民研究の基準としていかに機能するのか、そして上記のような諸問題を解決するのに役立つのか、各地の具体例とともに紹介する。
講演者略歴(C.フレイワルド)
ウィスコンシン大学卒業、同学で博士号を取得。ミシシッピ大学で客員教員、助教職を経て、2019年から准教授。主にマヤ地域における同位体地化学、動物考古学が専門で、メキシコ、グアテマラ、ベリーズで10年以上の調査経験を持つ。主な著作に2019 Price, TD, V Tiesler, and C Freiwald. Origins of the sacrificial victims in the Sacred Cenote, Chichén Itzá, Mexico. American Journal of Physical Anthropology. doi.org/10.1002/ajpa.23879。2018 Miller Wolf, K, C Freiwald. Re-interpreting ancient Maya mobility: A strontium isotope baseline for western Honduras. Journal of Archaeological Science: Reports 20:799-807. などがある。
共同発表者紹介(D.プライス)
ウィスコンシン大学名誉教授。同学考古化学研究所所長、米国科学アカデミー会員。ニュージーランド、デンマーク、北米、中国、ヨーロッパなど世界各地で農業の起源や移民動態に関する調査研究を40年以上にわたって推進している。250件以上の学術論文を発表し、また25冊の学術書の著者でもある。現代を代表する考古科学の世界的な権威である。