III International Symposium on
the Ancient Maya in Japan:
Recent Interdisciplinary Research in
Maya Archaeology
第3回
国際マヤシンポジウム
異分野融合で見える最先端のマヤ考古学
サン・バルトロ遺跡における
壁画の発見と保存へ向けた取り組み
ボリス・ベルトラン
(サン・バルトロ-シュルトゥン
広域考古学プロジェクト、グアテマラ)
(初来日)
サン・バルトロ遺跡は紀元前800年頃から紀元後250年頃にかけて栄えた比較的小さな遺跡である。ここでは今から18年前、世界中のマヤ考古学者たちを驚愕させた大発見があった。後に「壁画の家」と名付けられた儀礼用の建造物の内側で、巨大な極彩色の壁画が見つかったのである。壁画には紀元前のマヤ社会における政治や宗教の概念が緻密に、且つ約2000年という時の経過を全く感じさせないほどの繊細さで描かれており、まさに古代マヤの至宝である。しかし、こういった大きな発見は時に考古学者にとって大きな挑戦となる。建物北側と西側の壁画は概ね元々の位置に残されていたのだが、その他実に7000片を超える壁画の断片(その中には最古のマヤ文字資料の一つが含まれていた)が建物を埋めた土塊に紛れていたのである。その一片一片の丁寧な発掘、記録、取り上げは困難を極めた。さらに、ひとたび発掘が済めば、後はこの美しい人類の遺産を未来に保存しなければならない。考古学、保存科学、マヤ碑文学、図像学、芸術家、多くの専門家からなる学際研究チームがグアテマラ国立考古学民族学博物館に設置された特別スペースで日夜より適切な保存のための分析、研究を進めている。本講演はこの壁画の発見から発掘、研究と保存のプロセスを時系列に沿って「その時、その現場」の臨場感とともに伝えるものである。
講演者略歴
グアテマラ、サン・カルロス大学を卒業後、エル・ティンタル遺跡、エル・ソッツ遺跡、ラ・ベガ・デ・コバン遺跡、リオ・アマリージョ遺跡で考古学発掘に従事し、専門はモニュメント的巨大建造物の研究。現在は米国スキッドモアカレッジのヘザー・ハースト准教授とともにグアテマラ、ペテン地方の北東部に位置するサンバルトロ遺跡、シュルトゥン遺跡の広域考古学調査団を主宰。