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チャルチュアパからの手紙

-C14年代からみた新カミナルフユ編年案とマヤ南部地域の社会過程

の再考-

市川 彰

(名古屋大学

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カミナルフユ遺跡はマヤ南部地域を最も代表する遺跡である。2014年、猪俣らによって示しされた同遺跡の新編年案は大きな議論を巻き起こしている。従来のマヤ文明の社会の複雑化や政治体制に関する定説に大幅に修正を加えたからである。つまり、従来の編年の一部を300年ほど年代的に新しい時期に設定し、神聖王を頂点とする中央集権的な政治機構の出現を紀元前100年以降とする説を提案したのである。これによって時代的には新しくなるものの社会の複雑化はゆっくりと時間をかけたものではなく、急速に進行するという新たな社会過程のあり方を示した。こうした新編年案に対しては、否定的な意見も少なくない。ただし、新編年案の検証はカミナルフユよりも西方に位置する数遺跡の資料からしかおこなわれていない。そこで、本発表では、カミナルフユ東方に位置し、マヤ南部地域主要遺跡のひとつチャルチュアパとその周辺遺跡のC14年代データをもとに新編年案の検証を試みる。結果、新編年案を支持するデータを報告する。

​講演者略歴

 

現在、名古屋大学高等研究院特任助教。青年海外協力隊としてエルサルバドル共和国で遺跡の調査や保存活動に従事したのち、名古屋大学大学院文学研究科博士課程に進学し、博士号(歴史学)を取得した。その後、日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:国立民族学博物館)を経て、現職。専門はメソアメリカ考古学で、古代社会における中心・周縁関係、突発的な環境変化(自然災害)と人間、コミュニティ主導型考古学調査法の開発などに関心がある。主な業績として、『古代メソアメリカ周縁史-大都市の盛衰と大噴火のはざまで-』(2017年、渓水社)、Strengthening social relationships through community archaeology at Nueva Esperanza, El Salvador: Challenges and lessons (2018, Journal of community archaeology and heritage 5(4):222-236)などがある。受賞歴として、日本学術振興会第1回育志賞(2011年)、名古屋大学第6回石田賞(2017年)がある。

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