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ライダー技術[1]と古典期マヤ低地の集団規模:

新たな資料と新たな挑戦

マルチェロ・カヌート

(チューレン大学、米国)

​(初来日)

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[1] Light Detection And Ranging(LiDAR)あるいはLaser Imaging Detection And Ranging(LIDAR)の頭文字を取ったもので、アクティブ・リモート・センシング・テクノロジーの一種。対象を遠隔からレーザーによって測定する技術である。

昨今、ベリーズ、グアテマラ、メキシコを中心とするマヤ文明圏では先進のライダー技術を駆使した研究が行われており、マヤ低地における社会規模とその複雑さについて多くの定説が刷新されつつある。人為的な痕跡が非常に微細なレベルで記録され、ライダーがカバーした領域内の活発な人間活動と天然資源の集中的な使用、そして自然環境への恒久的なインパクトが証明されつつあるのである。実際、ライダーの広域データによって古代マヤ社会における自然環境、農地組織、都市化の規模、人口密度、そして戦争の在り方についても新たなモデルの構築が促されている。こうした状況を踏まえ、本発表ではグアテマラ、ペテン県にあるマヤ生物圏保護区で2100km²以上の広域をカバーしたパクナム財団による最新のライダー調査を紹介する。多数の住居趾を確認し、国際研究チームが古典期後期のマヤ中央低地の総人口を700万人から1100万人と算出した革新的な研究である。人口密度の通時的な変動も記録されており、今後はさまざまな地域や時代のライダーデータを比較することで、この人口変動を引き起こした社会経済的および政治的プロセスの解明が期待されている。

​講演者略歴

ハーバード大学卒業、ペンシルバニア大学で博士号を取得後、エール大学で助教職を務め、2009年からチューレン大学教授、同学中央アメリカ研究所所長。マヤ文明圏のみならず南アメリカ、インド、北アフリカ、そしてアメリカ北東部で考古学発掘の経験を持つ。主な研究テーマは古代マヤにおける社会政治的複雑化の過程と複雑化した社会を維持する統合的なメカニズムの解明、世帯と地域社会のダイナミクス、物質文化によるアイデンティティの定義、そして考古学の現代社会コンテクストの研究。現在、グアテマラ北西部でラ・コロナ広域考古学プロジェクトを共同主宰。
 

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